通院付添費
名古屋の弁護士の能勢洋匡です。
本日は、通院付添費について、お話します。
1 付添の必要性
交通事故で負傷された方は、治療のために通院する必要があります。
通院の際、年齢・負傷状況などの理由により、近親者の付添いが必要になることがあります。
近親者は、家族の身を案じ、時には仕事を休んでまで通院に付き添います。
最高裁は、被害者が、受傷により付添看護を必要とし、近親者の付添い看護を受けた場合には、現実に付添費の支払いをせず、その請求を受けていない場合であっても、被害者は付添費相当額の損害を被ったものとして、加害者に対してその賠償を請求することができるとして(最判昭和46年6月29日民集25巻4号650頁)、一定の要件のもとで、通院付添費の請求を認めています。
2 通院付添費が認められるケース
通院付添費は、通院に付添いの必要性が存在することが要件となります。
自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」といいます。)では、12歳以下の子供の通院等に近親者等が付き添った場合には、看護の必要性について医師の証明を要することなく、通院看護費を支払うとしています。
裁判実務でも、12歳以下の子供については、付添の必要性を認め、通院付添費を認める傾向にあります。
一方、被害者の年齢が12歳を超える場合、未成年であったとしても、常に付添いの必要性が認められるとは限りません。
被害者の症状や医師の指示の有無などから、付添の必要性が認められる必要があります。
子どものことを心配して、仕事を休んでまで付き添われているご両親も多くおられます。
しかしながら、付き添いをするに当たっては、事前に医師の指示書を取り付けるなどの注意が必要です。
年齢以外にも、脊髄損傷により四肢に麻痺が残っている、下肢を骨折しているなど、その症状から、通院のために付添看護が必要であることが認められる場合には、通院付添費を請求することができます。
3 通院付添費の金額
自賠責保険の支払基準では、近親者による通院看護料(付添費)は、1日当たり2100円(令和2年3月31日までの事故は2050円)とされています。
民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(いわゆる「赤い本」)では、通院付添費は1日当たり3300円、ただし、事情に応じて増額を考慮することがある、とされています。
被害者の年齢・症状から、近親者が休業してでも通院に付き添う必要があった場合には、休業損害相当額が、通院付添費として認められることがあります(4歳の幼児の通院に母親が付き添った例として、東京地判平成8年12月10日。)。
ただし、休業損害相当額の請求が認められるかどうかについては、慎重な検討が必要となります。
ご家族の通院への付添いを希望される方は、一度、弁護士にご相談ください。