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通院はお早めに
名古屋の弁護士の能勢洋匡です。
本日は、交通事故後の通院の必要性についてお話します。
1 交通事故による受傷
⑴ 交通事故に遭われた方で、少しでも痛みを感じられた方は、お早めに医療機関を受診してください。
⑵ 追突事故に遭い、むち打ちでお怪我をされた方の中には、事故直後は大した痛みがないため、通院をされない方がいます。
⑶ 数日後に痛みがでてきても、すぐに良くなるだろうと思って受診をしないこともあります。
⑷ しかしながら、交通事故による受傷は重症化しやすいため、自己判断で通院しないでいると、症状が悪化してしまうおそれがあり、危険です。
⑸ そのうえ、事故から長期間受診をしないでいると、加害者に対して治療費を請求できないおそれがあります。
2 交通事故と治療費
⑴ 交通事故でお怪我をされた方は、加害者に対して治療費を請求することができます。
⑵ しかしながら、治療費を請求するためには、事故による受傷と通院との間に因果関係が認められる必要があります。
⑶ ところが、事故発生から通院するまでに間隔が空きすぎてしまうと、事故と受傷との因果関係が否定されてしまうのです。
⑷ 事故当日が土日祝日等の特段の事情がない限り、事故当日か、おそくとも翌日までには通院しましょう。
⑸ 事故から初診までに1週間以上間隔が空いてしまった場合、因果関係が認められない可能性が大幅に上がるだけでなく、後遺障害の認定を受けるうえでも不利になることが多々あります。
⑹ 交通事故に遭われた際は、お早めに通院してください。
シートベルトの着用を
名古屋の弁護士の能勢洋匡です。
本日は、シートベルト着用の必要性についてお話します。
1 シートベルトの着用義務
⑴ 自動車に乗る際は、必ずシートベルトを着用しましょう。
⑵ 自動車の運転者は、疾病等やむを得ない事情がある場合を除き、自身がシートベルトを装着すること、及び、同乗者にシートベルトを着用させる義務があります(道交法71条の3)。
⑶ シートベルトを着用しないと、交通事故が発生した際、衝撃で跳ね飛ばされ、車内で全身を強打し、あるいは、車外に放り出されるなどして、命に係わる重傷を負いかねません。
⑷ 運転席や助手席だけでなく、後部座席に座る場合でも、必ずシートベルトを着用してください。
2 シートベルトと過失相殺
⑴ 交通事故の被害に遭われた方は、加害者に対して損害賠償を請求することができます。
⑵ しかしながら、事故による受傷について、被害者側にも過失がある場合には、過失割合に応じて請求額が減額されてしまいます。
⑶ シートベルトを着用しないまま事故に遭った場合、1割から2割の過失相殺が認められることがあります。
⑷ 重傷を負ったうえに、事故に対する補償を減額されるという二重の苦しみを味わうことがないよう、自動車に乗るときは。必ずシートベルトを着用してください。
自賠責保険の被害者請求
名古屋の弁護士の能勢洋匡です。
本日は、自賠責保険への被害者請求についてお話します。
1 自賠責保険と任意保険
⑴ 自動車を運転するにあたっては、自賠責保険に加入することが、自動車損害賠償保障法(自賠法)により義務付けられています。
⑵ ただし、自賠責保険では、事故を起こしてしまった際の補償額に上限があるうえ、物的損害は補償されないことから、多くの方は、自賠責保険に加えて、任意保険にも加入されています。
⑶ 交通事故が発生した場合、通常、任意保険会社が対応することになりますが、自賠責保険会社による支払もなされています。
2 自動車事故と一括対応
⑴ 自動車事故でお怪我をされた場合、医療機関において治療を受ける必要があります。
⑵ 通院にあたり、事故の被害者に過失がないか、あっても過失が小さい場合には、加害者側の任意保険会社が、直接、医療機関に治療費を支払うことが多いです。
⑶ 任意保険会社は、治療費を支払った後、自動車損害賠償保障法(自賠法)15条に基づき、加害者の自賠責保険会社に対して支払った治療費を求償します。
⑷ 任意保険会社が、自賠責保険会社への請求を一括して扱うことから、一括対応と呼ばれます。
3 被害者請求
⑴ 被害者側の過失が小さくない場合や、加害者が事故の責任を否定している場合には、加害者側任意保険会社が一括対応をしないことがあります。
⑵ 被害者側保険会社の人身傷害保険が適用される場合、そちらから治療費が支払われますが、それもない場合には、被害者自身が加害者側自賠責保険に対して治療費等を請求する必要があります。
⑶ 自動車事故の被害者は、自賠法16条に基づき、加害者側の自賠責保険会社に対して、直接治療費や慰謝料等を請求することができます。
⑷ 交通事故の被害者が直接請求するため、被害者請求と呼ばれています。
4 被害者請求は弁護士にご相談を
⑴ 自賠責保険会社に対する請求は、被害者ご本人でも行うことができますが、必要書類を用意・作成する必要があり、人によっては難しいと思われることもあります。
⑵ また、相手方に事故の過失が全くない場合や、事故態様から、自賠責保険会社から治療費の支払いを拒まれることもあります。
⑶ 弁護士にご相談いただければ、被害者請求の方法や請求の見通しについてご説明できます。
⑷ 被害者請求を検討されている方は、一度、弁護士にご相談ください。
人身傷害保険の重要性
名古屋の弁護士の能勢洋匡です。
本日は、自動車保険の人身傷害保険について説明します。
1 交通事故と人身傷害保険
⑴ 人身傷害保険は、交通事故に遭われた際、ご自身あるいはご家族が加入されている自動車保険から治療費や休業損害、慰謝料などが支払われる保険です。
⑵ 交通事故でお怪我をされた場合、加害者側が任意保険に加入している場合、加害者側保険会社が治療費を支払うことが多いです。
⑶ しかしながら、お怪我をされた方の過失が大きい場合や、加害者が任意保険に加入していない場合、あるいは、ひき逃げ事故に遭ってしまった場合には、加害者側からの治療費の支払いがされないおそれがあります。
⑷ そんなとき、人身傷害保険に加入されていると、そちらから治療費などが支払われるため、安心して通院することができます。
2 人身傷害保険の被保険者
⑴ 人身傷害保険は、通常、自動車保険を契約している車両に乗車している際事故に遭われたときに補償を受けられるという内容になっています。
⑵ そのうえで、特約により、ご家族が歩行中や自転車に乗っている際に自動車事故に遭った場合にまで補償範囲を広げられることが多いです。
⑶ 歩行中や自転車に乗っているときに自動車事故に遭うと、自動車に搭乗中に事故に遭ったときよりも被害が大きくなることが多いため、ご家族のためにも、補償範囲を広げておくことをお勧めします。
3 人身傷害保険による補償額
⑴ 人身傷害保険から支払われる金額は、あらかじめ約款で定められており、いわゆる裁判基準よりも低い金額となっています。
⑵ ただし、約款上、裁判による判決や裁判所での和解が成立した場合には、その内容に基づいて損害額を算出し、保険金を支払うこととしていることが多いです。
⑶ 被害者に過失がある場合には、人身傷害保険を利用することで、過失相殺されてしまう部分についても補償を受けられる可能性があります。
⑷ ただし、過失相殺と人身傷害保険による補填については複雑な論点があるため、一度、弁護士にご相談ください。
後遺障害が認定されたときに受け取れる金額
名古屋の弁護士の能勢洋匡です。
本日は、後遺障害が認定されたときに受け取れる金額について説明します。
1 後遺障害と損害賠償
⑴ 自動車事故にお怪我をされた場合、治療を受けても後遺障害が残ってしまうことがあります。
⑵ この場合には、相手方の自賠責保険会社を通じて、損害保険料率算出機構に対して、後遺障害の認定を申請する必要があります。
⑶ 自賠責保険の後遺障害が認定されると、まず、相手方の自賠責保険会社から、後遺障害に関する保険金が支払われます。
⑷ ただし、自賠責保険の後遺障害保険金は、被害者の損害を補填するための最低限度のものであり、同保険金を上回る損害が生じている場合には、加害者に対し、さらに損害賠償を請求する必要があります。
⑸ 後遺障害が残存した場合の損害は、主に、後遺障害慰謝料と逸失利益です。
2 自賠責保険の後遺障害保険金
自賠責保険の後遺障害保険金は、以下のとおりです。
⑴ 別表第1 第1級 4000万円
第2級 3000万円
⑵ 別表第2 第1級 3000万円
第2級 2590万円
第3級 2219万円
第4級 1889万円
第5級 1574万円
第6級 1296万円
第7級 1051万円
第8級 819万円
第9級 616万円
第10級 461万円
第11級 331万円
第12級 224万円
第13級 139万円
第14級 75万円
3 後遺障害慰謝料
⑴ 交通事故により負傷し後遺障害が残ってしまった場合には、傷害に関する慰謝料とは別に、後遺障害に関する慰謝料を請求できます。
⑵ 民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(交通事故の「赤い本」)には、訴訟を提起した場合に認定される可能性がある後遺障害慰謝料の目安額が掲載されています。
第1級 2800万円
第2級 2370万円
第3級 1990万円
第4級 1670万円
第5級 1400万円
第6級 1180万円
第7級 1000万円
第8級 830万円
第9級 690万円
第10級 550万円
第11級 420万円
第12級 290万円
第13級 180万円
第14級 110万円
⑶ この金額は、あくまでも目安額であり、請求方法が示談交渉か裁判か、また、後遺障害の内容・程度によって変動する可能性があります。
4 逸失利益
⑴ 後遺障害が残存するということは、全部または一部の労働能力が失われてしまうということであり、将来働くことで得られたはずの所得が減少するおそれがあります。
⑵ 後遺障害が残存した場合、この逸失利益を請求する必要があります。
⑶ 逸失利益の計算式
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間のライプニッツ係数
⑷ 基礎収入
原則として、事故の前年度の収入(源泉徴収票や確定申告書の所得金額)を元に算定します。
ただし、被害者が若年である場合には、平均賃金を基準に算定することもあります。
⑸ 労働能力喪失率
原則として、自賠責保険の後遺障害別等級表の労働能力喪失率を基準とします。
ただし、外貌醜状や脊柱の変形障害については、後遺障害別等級表の喪失率と現実の労働能力の喪失が一致するとは限らないとされているため、労働能力の喪失率については、弁護士に相談されることをお勧めします。
⑹ 労働能力喪失期間
原則として、症状固定日から67歳までの期間です。
ただし、症状固定時の年齢が67歳を超えるか、症状固定時から67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1より短くなる場合には、原則として平均余命の2分の1(小数点以下は切り捨て)が喪失期間となります。
なお、12級13号または14級9号の後遺障害が認定された場合の喪失期間は、12級13号は10年程度、14級9号の場合には5年程度が認定されることが一般的です。
⑺ ライプニッツ係数
逸失利益は、将来得るべき利益を、現時点で受け取ることになるため、中間利息の控除が必要となります。
たとえば、労働能力喪失期間が15年であっても、15年分の逸失利益を受け取れるわけではなく、15年に対応するライプニッツ係数である11.9379(年利3%。令和2年4月1日以降の事故の場合)を乗じて算定します。
5 後遺障害に関する損害賠償は、金額が大きいうえに、慎重な検討が必要なため、一度、弁護士にご相談ください。
後遺障害の認定に必要な期間
名古屋の弁護士の能勢洋匡です。
本日は、後遺障害認定に必要な期間についてお話します。
1 交通事故と後遺障害
⑴ 交通事故によるお怪我は、重症になることも多く、治療を受けたとしても、事故前の状態まで回復することなく、症状が残ってしまうことがあります。
⑵ 「傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法(以下「療養」という。)をもってしても,その効果が期待し得ない状態(療養の終了)で,かつ,残存する症状が,自然的経過によって到達すると認められる最終の状態(症状の固定)に達したとき」を,症状固定といいます(昭和50年9月30日付労働省労働基準局長通達(基発第565号)より)。
⑶ 症状固定時に残存した障害を「後遺障害」といいます。
⑷ 自動車事故により受傷し、後遺障害が残ってしまった場合には、相手方の自賠責保険会社を通じて、後遺障害の認定を申請する必要があります。
2 後遺障害申請の方法
⑴ 後遺障害を申請する方法は、相手方保険会社に申請を委ねる事前認定と、本人または代理人弁護士が必要資料を全て用意したうえで申請する被害者請求の2つがあります。
⑵ 被害者請求では、認定を受けるために必要な資料を全て揃えたうえで申請をすることができるため、事前認定よりも後遺障害認定の可能性が高いといわれています。
3 被害者請求の流れ
⑴ 後遺障害認定を申請するためには、主治医に後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
その際、病院が保管しているレントゲンやMRI等の画像資料も取り付けます。
後遺障害診断書の作成には、2週間から1か月ほど時間が必要となることが多いです。
⑵ また、事故発生から症状固定までの診断書や診療報酬明細書が必要になります。
相手方保険会社が治療費の一括対応をしている場合、原本照合印及び担当者印のある写しを送ってもらえば、原本に代えることができます。
医療機関から相手方保険会社に診断書等が送付され、治療費が支払われてからの送付になるため、治療終了から1か月ほど時間がかかることも珍しくありません。
この間に、交通事故証明書や印鑑証明書等、そのほかの必要書類を用意します。
⑶ 後遺障害の申請に必要な書類が揃ったら、相手方自賠責保険会社に申請書類を提出します。
⑷ 新型コロナウイルスによる影響もあるのか、申請から1か月で審査が終わることはあまりなく、2~3か月ほどかかることが多いです。
おおむね、2~3か月ほど審査に時間がかかることが多いです。
また、調査事務所から医療機関に医療照会がなされる場合には、さらに1~2か月時間が必要となります。
⑸ したがって、症状固定から後遺障害の認定までは、少なくとも3か月は時間がかかると思っていただいた方がよいでしょう。
交通事故と健康保険
名古屋の弁護士の能勢洋匡です。
本日は、交通事故と健康保険の関係についてお話します。
1 交通事故と治療費
⑴ 交通事故の被害に遭って傷害を負われた方は、病院で治療を受けなくてはなりません。
⑵ 通常は、被害者側に治療の必要性があれば、加害者側の任意保険会社が病院に直接治療費を支払う「一括対応」をしてくれます。
⑶ しかしながら、過失割合に大きな争いがある場合には、一括対応をしてもらえないことがあります。
⑷ そんな時は、一度、被害者が窓口で治療費を支払う必要がありますが、自由診療での治療費はかなり高額になるため、健康保険を使用して治療費を支払うことが考えられます。
2 交通事故と健康保険
⑴ 就業中や出勤・退勤中の事故は、労災・通勤災害として労災保険の対象になりますが、それ以外の状況で交通事故に遭った場合は、健康保険を使用して治療を受けることもできます。
⑵ ただし、健康保険を使用して治療を受ける場合には、健康保険組合等が治療費の7割を支払うことになりますが、事故の治療費は本来加害者が負担すべきものであるため、健康保険組合等から加害者に対する求償が必要となります。
⑶ 交通事故の被害者が健康保険を使って治療を受ける場合には、「第三者行為による傷病届」を提出し、交通事故の治療であること及び加害者の情報を申告しなくてはなりません。
3 健康保険の使用を検討するケース
⑴ 加害者側が無保険の場合、治療費の一括対応がなされないうえ、賠償も期待できないため、健康保険を使用して治療費を支払う必要があります。
⑵ 交通事故で健康保険の使用を検討されている方は、一度、弁護士にご相談ください。
複数の後遺障害がある場合
名古屋の弁護士の能勢洋匡です。
本日は、複数の後遺障害がある場合の等級の併合について説明します。
1 交通事故で負傷したことにより、複数の後遺障害が残存してしまうことがあります。
後遺障害等級表に該当する障害が2つ以上ある場合には、最も上位の後遺障害の等級を、1~3等級繰り上げることとされています。
ただし、13級以上の後遺障害のほかに残存した後遺障害が14級のみである場合には、併合による繰り上げはなされません。
2 併合の原則
複数の後遺障害が残存した場合の併合・繰り上げの原則は、次のとおりです。
⑴ 第13級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を1級繰上げる。
ただし、それぞれの後遺障害に該当する保険金額の合算額が繰り上げ後の後遺障害の保険金額を下回るときはその合算額を保険金額として採用する。
⑵ 第8級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を2級繰上げる。
⑶ 第5級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を3級繰上げる。
3 同一系列内の障害の特則
⑴ 後遺障害は、上肢や下肢といった別々の部位に生じることもあれば、上肢に複数の障害が残存することもあります。
⑵ 障害認定基準は、身体の部位により、障害系列を分けていますが、同一の系列内に複数の障害が残存した場合には、まず、同一系列内で評価がなされます。
⑶ たとえば、上肢について、肩関節の機能に「著しい障害」(第10級10号)が、肘関節の機能に「障害」(第12級6号)が、それぞれ残存した場合、より重い10級の障害を1等級繰り上げ、9級と評価します。
⑷ そのうえで、例えば、外貌の醜状で12級の障害が認定された場合、9級の等級を1等級繰り上げ、8級が認定されます。
⑸ また、上肢の機能障害と手指の障害は同一系列と取り扱われるなど、複雑なルールが存在しています。
後遺障害の併合は、認定が特に複雑となるため、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
傷痕と後遺障害
名古屋の弁護士の能勢洋匡です。
本日は、傷痕と後遺障害について説明します。
1 傷痕と後遺障害
⑴ 交通事故で怪我をした場合、治療後も傷跡が残ってしまうことがあります。
⑵ 体に傷痕が残ることは、被害者の心に重い負担を与えます。
⑶ このため、その傷跡の大きさによっては、自賠責保険の後遺障害認定がされることがあります。
2 「外貌」の醜状障害
⑴ 「外貌」とは、頭部、顔面部、頚部のごとく、上肢及び下肢以外の日常露出する部分をいいます。
⑵ 後遺障害認定の対象となる外貌の醜状とは、他人をして醜いと思わせる程度、すなわち人目につく程度以上のものであることが必要です。
⑶ たとえば、眉毛や頭髪等に隠れる部分については、醜状として取り扱わないとされています。
3 外貌醜状の後遺障害等級
⑴ 外貌に著しい醜状を残すもの(第7級12号)
「著しい醜状」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいいます。
ア 頭部にあっては、手のひら大(指の部分は含まない。)以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損。
イ 顔面部にあっては、鶏卵大以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥没。
ウ 頚部にあっては、手のひら大以上の瘢痕
⑵ 外貌に相当程度の醜状を残すもの(第9級16号)
「相当程度の醜状」とは、原則として、顔面部の長さ5cm以上の線状痕で、人目につく程度以上のものをいいます。
⑶ 外貌に醜状を残すもの(第12級14号)
「醜状」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいいます。
ア 頭部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損。
イ 顔面部にあっては、10円銅貨以上の瘢痕または長さ3センチメートル以上の線状痕
ウ 頚部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕
⑷ 耳介および鼻の欠損障害
ア 耳介軟骨部の2分の1以上を欠損した場合は「著しい醜状」とし、その一部を欠損した場合は、単なる「醜状」とする。
イ 鼻軟骨部の全部または大部分を欠損した場合は「著しい醜状」とし、その一部または鼻翼を欠損した場合は、単なる「醜状」とする。
4 測定方法
⑴ 外貌醜状の後遺障害は、「人目につく程度以上のもの」に該当するか確認する必要があるため、後遺障害診断書の記載だけでなく、損害保険料率算出機構の担当者による面談がなされます。
⑵ 認定基準に1mm届かないだけで非該当または等級が下がるおそれがあるため、測定方法を把握しておく必要があります。
⑶ 2個以上の瘢痕または線状痕が相隣接し、または相まって1個の瘢痕または線状痕と同程度以上の醜状を呈する場合は、それらの面積・長さ等を合算して等級が認定されます。
⑷ また、大阪地裁平成10年1月23日判決は、「両端を定規で直線的に測定すると約2.5cmであるが、瘢痕の形に沿ってこれを測定すると3センチメートルに及ぶ」という瘢痕について、12級14号に該当するとしました。
実務でも、線状痕について後遺障害診断書の作成を求める際は、定規を当てるのではなく、傷痕に沿って糸を当て、その糸の長さで測定してもらう必要があります。
5 外貌醜状と逸失利益
⑴ 傷痕が残っていたとしても、体が動かなくなるわけではないことから、裁判では、外貌醜状の後遺障害について、逸失利益の発生を否定する傾向にあり、保険会社も、示談交渉の段階で逸失利益を認めることはほとんどありません。
⑵ しかしながら、傷痕によっては、対人関係に影響を及ぼすほか、モデルや接客業など、外貌が就業に影響する仕事もあることから、個別の事情によっては、逸失利益の請求が認められることもあります。
⑶ どのような場合に逸失利益が認められるかは、弁護士にご相談ください。
共同不法行為と自賠責保険
名古屋の弁護士の能勢洋匡です。
本日は、共同不法行為と自賠責保険についてお話します。
1 共同不法行為
複数の当事者が共同の不法行為によって他人に損害を与えることを、共同不法行為といいます。
共同不法行為は、複数の者が共謀して不法行為に及んだ場合だけでなく、複数の当事者の過失によって他人に損害を与えた場合も成立します。
たとえば、信号機がない交差点での出会い頭の自動車事故は、双方の運転手に過失が認められることがほとんどです。
自動車の同乗者が傷害を負った場合や、衝突の反動で歩行者がはねられて負傷した場合には、双方の運転者の共同不法行為により損害が発生したことになります。
共同不法行為の加害者は、被害者に対して、連帯して損害賠償義務を負います。
2 共同不法行為と自賠責保険
自動車事故において、共同不法行為により傷害を負った被害者は、それぞれの加害者の自賠責保険に対して請求することができます。
加害車両が2台であれば、請求できる金額が2倍になります。
自賠責保険の傷害部分の上限は120万円ですが、加害車両が2台の場合には、2倍である240万円を請求することができます。
このことが重要な意味を持つ場面の一つとして、被害者が、外貌醜状に関する後遺障害を負ってしまった場合があります。
自賠責保険において、後遺障害が認定された場合、その障害の等級に応じて、後遺障害保険金が支払われます。
この後遺障害保険金には、後遺障害慰謝料と逸失利益が含まれます。
もっとも、自賠責の保険金だけでは、被害者の逸失利益と後遺障害慰謝料全てを補償するには至らないため、自賠責保険の保険金額を超える損害について、加害者に請求することになります。
ところが、外貌醜状に関する後遺障害は、それ自体が身体の機能を障害するものではないことから、ホステスやモデルなど、外貌が重視される職業を除き、逸失利益が否定される傾向にあります。
このため、加害者側保険会社は、示談交渉において、逸失利益の発生を否定するため、訴訟において、労働能力に支障が生じたことを証明できなければ、逸失利益に該当する賠償を受けることができません。
一方、自賠責保険では、後遺障害の等級に該当すれば、逸失利益の発生について証明がなくとも、保険金を受け取ることができます。
共同不法行為に該当する自動車事故により醜状障害を負った被害者は、双方の当事者の自賠責保険に保険金を請求することにより、裁判基準の慰謝料の範囲を超えて、補償を受けることができます。
複数の自動車が関係する交通事故に遭われた方は、是非、弁護士法人心にご相談ください。